男のチキン南蛮 修行編
※チキン南蛮の調理法は中盤以降にあると思います。
第1話
あるところに優柔不断な男がいた。
彼は何も決められない。その優柔不断さは時に人を惑わし、時に自分を惑わす。そんな男なのである。
そんな男にも、迷わない瞬間がある。
この男の物語はここから始まるのである。
ある時、男は定食屋に入った。いつも行く定番の定食屋である。
その定食屋は客を飽きさせることのないメニューの豊富な定食屋である。
もちろんその男には苦である。まさしく苦渋の決断を毎回強いられるのである。なぜその男はその定食屋に通うのか、自分を苦しめてまでなぜその定食屋に通うのか、その答えは、旨いから、それ以外存在しないのである。
男は自分が迷うことを知っている。決してその定食屋は敵ではないが、兵法の基本は、敵を知り、己を知ること。男はメニューを熟知し、そして自分が迷うことを知っているのである。もはや敵はいない、はずである。
店へ向かう途中、男は考える。
今日何を食べるか。ひたすら考える。自転車で5分の距離。ひたすら考えるのである。男の頭の中にはメニューがすべて入っている。焼肉定食、ハンバーグ定食、アジフライ定食、チキンカツ定食、エビフライ定食、、、すべて頭に入っている。
男は考える。今、自分は何を欲しているのか。肉なのか、魚なのか、はたまた米が食べたいだけなのか。その時の気分を、それは最後の晩餐を決めるかのごとく、考えるのである。
男は定食屋に着いた。その定食屋には週刊誌が揃っている。席に着く前に、週刊少年ジャンプ、週刊ヤングマガジン、週刊ヤングジャンプの3冊を手に取る。これはルーティンであるが、優柔不断の賜物と言っても過言ではない。
男はメニューを開く。全くもって意味がない。男の頭の中にはメニューが全て入っている。しかし、男は開く。最後の最後まで自分の本音と向き合う為、メニューとも向き合うのである。
その日、男の頭の中は野菜だった。肉野菜定食を食べるつもりだった。ビタミン不足を補う為、キャベツとモヤシの触感と共に光り輝く白米を胃に掻っ込む為、理由は様々だが優柔不断な男にとって事前に決めておく事は必要不可欠なのである。
だが、男はメニューを開いてしまった。これは今後の人生を大きく左右することになろうとは男は気づかない。もちろんこの70億いる世界で誰も気づかない、言うなれば時限爆弾。男は押してしまったのである。
話は変わるが、あなたの好きな食べ物は何だろうか。
この質問の時、あなたは何を思い浮かべるであろうか。
食材を浮かべるか、料理を浮かべるか。普段から食べる食材、料理、慣れ親しんだものを浮かべるか。はたまた、人生で数回しか食べたことのない絶品を思い浮かべるか、意外と難しいものである。
この時ぱっと浮かぶものはあなたが本当に好きなものだと思う。食材だろうと料理だろうとなんだろうと素敵なことだと思う。人間に食欲がある限り、それに対して素直な心で好きなことを思い浮かべられることは、胸を張って良い。私はそう考える。
さて、話は戻るがかの男の話である。
もちろん、この男は好きな食べ物を決められない。考えるほど浮かび、そして消えていく。男にこれといった好きな食べ物はないのであろうか、彼はこの質問の度、自問自答を繰り返し、優柔不断のドツボにはまるのである。
さらに戻り定食屋の話である。その定食屋には日替わりメニューが存在する。だがこのメニューは不思議なことに今まで男の琴線に触れることはなかった。肉を食べたい時は魚、魚を食べたい時は野菜、野菜を食べたい時は肉。この店の日替わりメニューはこの男のこの店に対する愛に反するように、日替わりメニューだけは外すのである。
勘の良い方ならもう気づくであろう。
そう。この男はこの定食屋で出会うのである、否、気づかされるのである、男の好物を。そして優柔不断との決別を味わうのである。
★男のチキン南蛮の作り方★
材料
・鶏もも肉
・卵
・片栗粉
・塩コショウ
タルタルソース
・卵
・玉ねぎ
甘酢
・しょう油
・酢
・みりん
・料理酒
・はちみつ
お供
・ビール
※すべて目分量。食べたい量、それに合わせて適当に作る。それが男の手料理である。
お料理BGM
①肉を切ります。熱の通りやすさを考え、できるだけ平らにしましょう。皮を取るほうがいいみたいですが、取った皮をどうするのか考えると面倒だよね。
②片栗粉と卵を良い感じに混ぜます、混ぜたほうが楽だもん。そして塩コショウをまぶした肉にをいい感じに付けます。手でやると愛情が伝わります。伝えていきましょう。こんな簡単に伝わる愛はありませんから。
③揚げます。火が強すぎると焦げますので優しく扱って揚げてください。
④タルタルソースを作ります。こいつ賞味期限買いてあるやん、かわいい。
パセリなんていらねえ。刻みに刻んだ玉ねぎを潰しに潰したゆで卵と混ぜ合わせます。
⑤甘酢を作ります。しょう油、酢、みりん、料理酒、はちみつをぶち込みます。
⑥甘酢をお肉とからめます。上の写真にお肉ちゃんをぶち込みましょう。(写真はない)
⑦完成!!!
―かの男はその定食屋の日替わりメニューでチキン南蛮との会合を果たすのである。
決して人生でチキン南蛮と出会ったことがないわけではない。今まで気づかなかったのである。あまりにも近く、されど出会わない、近くて遠いチキン南蛮。その日から男は誓うのである。究極のチキン南蛮を自らの手で作り上げることを。これは序章に過ぎない。大チキン南蛮時代が今、始まるのである。
チキン南蛮のレシピ?欲しけりゃくれてやるって感じで、、
◆今日の所感
目分量でじゃ究極に出会ってもレシピは残らないではないか。
まあある意味、ロマンやな、これも大海賊時代やな、、。